便秘とは、便を十分かつ快適に排出できない状態を指します。医学的には
①自発的な排便回数が、週に3回未満である。
②便形状が、排便の4分の1超の頻度で、兎糞状便または硬便である。
③排便の4分の1超の頻度で、強くいきむ必要がある。
④排便の4分の1超の頻度で、残便感を感じる。
⑤排便の4分の1超の頻度で、直腸肛門の閉塞感や排便困難感がある。
⑥排便の4分の1超の頻度で、用手的な排便介助が必要である。
これらの6つの項目のうち、2項目以上を3か月満たすことと定義されています。しかし、排便習慣には個人差が大きいため、排便回数だけで便秘とは決められません。たとえ3~4日排便がなくても、症状がなければ必ずしも便秘とは言えません。
排便リズムが乱れると、直腸に便が到達しても便意を感じなくなります。便意を我慢し過ぎたり、トイレに行く時間を確保できなかったりすることが原因です。
大腸の蠕動運動が低下し、便が通過するのに時間がかかります。大腸内に便が長時間滞在する状態です。主に、食物繊維の摂取不足や運動不足によって起こります。便秘の中で最も多いタイプです。
大腸の蠕動運動をコントロールする自律神経のバランスが崩れ、蠕動運動が強くなりすぎて腸が痙攣します。これにより便秘が起こります。大腸に過度のストレスや緊張が原因です。便秘のほかに腹痛や腹部膨満感が現れることがあります。
大腸がんは、食生活の欧米化と関連があり、特に動物性脂肪の多量摂取が要因の一つです。動物性脂肪を多く摂ると胆汁酸が過剰に分泌され、これが腸内で長く留まることで発がん物質へと変わることがあります。初期症状はほとんどなく、自覚症状が出る頃には進行していることが多いため、定期的な大腸カメラ検査が推奨されます。
過敏性腸症候群は、便秘や下痢を繰り返す消化系統の機能障害です。ここの疾患は、便秘の種類でいうと「痙攣性便秘」に該当します。便秘や下痢の他に、腹痛や膨満感を伴うことが多く、ストレスが原因で症状が悪化することもあります。
腸閉塞は、腸機能障害や腸の捻じれ、腫瘍などによって腸が詰まり、便が移動できない状態を指します。腸内に便やガスが溜まり、お腹の張りや腹痛、嘔吐、発熱が起こります。腸閉塞は緊急を要するため、早急な医療対応が必要です。
便秘は痔の一因となります。硬い便が肛門を傷つけたり、排便時の過度ないきみが肛門部のうっ血を引き起こすことがあります。痔による痛みや出血が悪化し、さらに便秘を重くする悪循環に陥ることもあります。
便秘の診断には、まず問診で状態や症状、生活習慣、既往症、服用中の薬、ライフスタイルなどを詳しく伺います。その後、以下の検査を行います。
食事療法では、食物繊維や水分を十分に摂取し、栄養バランスの良い食事を規則正しく摂ることが重要です。ダイエットを行っている場合は、食事量が減少することで便秘が起こりやすくなるため、適切なカロリーコントロールのアドバイスも行っています。
運動療法では、適度な有酸素運動を心がけてください。激しい運動をする必要はなく、散歩や階段利用など、日常に取り込みやすい運動で構いません。運動を継続することで筋力が付き、基礎代謝が上がります。また、血流が促されることで腸機能も改善できます。ストレッチなども有効です。
生活習慣の改善では、規則正しい食事や睡眠などで腸機能を改善していきます。また、便意があった際は、なるべく我慢せずにトイレに行くことが大切です。これらの生活習慣の改善は、便秘解消だけでなく全身の健康増進に繋がります。さらに、湯船に浸かって全身を温めることで血行が良くなり、便秘解消に役立ちます。ストレスも便秘に大きく影響するため、リラックスできる時間を過ごすこともお勧めです。
薬物療法では、市販薬によって便秘を軽減していても、次第に市販薬が効かなくなってさらに便秘を悪化させることがあります。医師による適切な処方で薬物療法を行うことで、効果的に便秘を改善することができます。